神奈川工科大学 健康医療科学部 管理栄養学科
食品衛生学・微生物制御学講座
澤井 淳 研究室
Projects
当研究室では、食品および環境のリスク低減技術の開発という観点から、「微生物制御」を食品のみならず、環境、医療への応用を含め、幅広く研究を行っています。研究についての詳しい内容は、澤井までお問い合わせ下さい。
焼成ホタテ貝殻粉末を利用した微生物制御
ホタテの貝殻は年間30万トンも発生し、産地では悪臭や地下水汚染を引き起こしています。しかし、加熱処理により抗菌活性を有する「資源」に生まれ変わります。食品に加えれば保存効果だけでなくミネラル補給にもなります。 貝殻は焼成処理により、主成分である炭酸カルシウムが酸化カルシウムに変化します。この酸化カルシウム(CaO)が抗菌活性を示します。細菌、真菌、ウィルス、細菌の耐熱性芽胞にも抗菌活性を発揮します。食品保存への応用を現在進めています。
<文献> 澤井淳:食品の化学的保存技術15 食品の化学的保存技術 各論4)その他 ④焼成Ca. 防菌防黴,38(1), 53-60 (2010. 1)
天然無機材料の抗菌活性
ホタテの貝殻以外にも、食品保存に利用できる天然の無機物は沢山あります。まず、ドロマイト。これはカルシウムに加えてnマグネシウムを含む天然の鉱石です。カルシウム強化における理想の比率Ca: Mg=2:1を天然に含む鉱石です。焼成貝殻と同じように焼成処理で抗菌活性を示します。さらに卵の殻。これも主成分は炭酸カルシウムで、焼成処理により酸化カルシウムになります。これまでの研究で焼成ドロマイト、焼成卵殻粉末ともこれまでの当研究室の研究で、焼成貝殻粉末同様、細菌、真菌、細菌の耐熱性芽胞にも抗菌活性を発揮します。
<文献>安江省吾、澤井淳、菊地幹夫:焼成ドロマイト粉末の細菌に対する殺菌作用, バイオインダストリー,27(8) 61-66 (2010. 8). http://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=3405
焼成ホタテ貝殻粉末を利用したバイオフィルム制御
細菌などの微生物の大部分は、食品や様々な素材の「表面」に存在し、「バイオフィルム」というものを形成しています。そして、同じ微生物でも、このバイオフィルムの状態と液体などプカプカ浮いている状態では性質が大きく異なることが分かってきました。簡単に言ってしまえば、薬剤や熱などのストレスに非常に強くなります。したがって、微生物制御を考える場合、このバイオフィルム状態の菌をどうやって制御するかというのは、非常に重要な課題です。私どもの研究室では焼成ホタテ貝殻粉末が食中毒起因菌のバイオフィルムにも有効に作用することを報告しています。
<文献> 永沢幸治郎、菊地幹夫、澤井淳:サルモネラ属菌バイオフィルムに対する焼成ホタテ貝殻粉末の除去特性. 防菌防黴,39(10), 587-594 (2011. 10). http://saaaj.jp/magazine/abstract/magazine_3910abstract01.html
微生物細胞の食品に対する吸着特性の検討
食中毒を予防するための3原則は、「殺す」「増やさない」「付けない」。食品は皆さんが思っている以上に様々な菌が大量にいます。そのようば場合は、冷蔵庫などで「増やさない」、あるいは加熱調理で「殺す」必要があります。また、それらと同じくらい「付けない」ということも必要です。食品の処理から流通における段階で、菌が食品につくことを「2次汚染」と言います。しかし、この2次汚染において、菌がどのように食品に吸着するか?どのような環境で育った菌が吸着しやすいかといったことは以外に分かっていません。当研究室ではこのような課題に取り組んでいます。
バイオフィルムおよびバイオファウルリング制御機能付与による分離膜の高機能化および高度利用
近年、膜分離法を利用した各種の処理プロセスが国内外で注目されています。。しかし、微生物汚染による膜性能の低下(バイオファウリング)が問題となっており、その対策として、各種前処理や化学薬品による膜の洗浄が必要とされています。当研究室ではこれまで、高分子の非多孔性膜による環境汚染物質やヨウ素などの分離・回収を行ってきました。そこで、これまでの膜分離を抗菌活性に関する成果を生かし、非多孔性分離膜への抗菌活性を持たせることで、バイオフィルムの形成およびバイオファウリングの制御に取り組んでいます
<文献>中村欣司、菊地幹夫、澤井淳: 抗微生物活性を有する非多孔質シリコーン分離膜の開発. 防菌防黴,40(8), 479-484 (2012. 8)http://saaaj.jp/magazine/abstract/magazine_4008abstract01.html
食品添加物や環境汚染物質が細菌のVNC化に及ぼす影響
新たな米の低アレルゲン化処理
近年、日本人の主食である米に対するアレルギーが増加しています。現在の対策として、酵素高圧処理を施したアレルギー対応米が市販されていますが、価格も高く、残念ながらあまりおいしいものではありません。アルカリ処理においても米のアレルゲンの除去が可能であることが報告されていますが、家庭で簡単にできる方法ではありません。貝殻カルシウムおよび焼成貝殻カルシウムは食品添加物(既存添加物)として認可され、アルカリ性を示します。貝殻カルシウムを利用し米の低アレルゲン化が可能ならば、カルシウムの補給にもなり、非常に有効な手段です。ホタテ貝殻粉末を利用した米の低アレルゲン化処理の実用化を目指し、研究を進めています。
酸化亜鉛ナノ微粒子の抗菌特性
自然界に存在する微生物の多くは培養が困難であり、培養可能な微生物は極めて少ないことが明らかになっています。。このように生きているが培養不可能な状態をViable but Non-Culturable(VNC) 状態といいます。VNC状態になる原因としては、低温や飢餓によるストレスなどの悪条件な環境に対応していると考えられています。VNC状態の菌はコロニーを形成しないため検出が困難であり、人体内で体温等の刺激により培養可能な状態となった場合、感染症や食中毒を引き起こす恐れもあります。私どもの研究室では、環境中に排出された低濃度化学物質が細菌のVNC 化に及ぼす影響について研究しています。
近年のナノマテリアル技術の進歩は著しく、すでに化粧品や医療など様々な分野で応用が進められている。粒子を細かくすることで、透明性や反応性の向上、また新規機能の発現等が数多く報告されています。抗菌分野においても「抗微生物活性の向上」に加え、抗菌処理を施す素材の特性をより生かすことができるナノマテリアルの研究開発が進展している。当研究室では医療、化粧品、塗料などに幅広く使用されている酸化亜鉛のナノ粒子を合成し、抗菌特性の把握、バイオフィルムへの作用(これが非常に面白い)、作用機構の解明に取り組んでいます。
<文献> 澤井淳:講座:防菌防黴分野におけるナノテクノロジー, ④防菌防黴分野で用いられるナノマテリアル, 日本防菌防黴学会誌, 41 (5) 249-254(2013.5)PDFファイルはこちら
Ready to Eat食品の微生物学的検討と耐性菌の残存
カンピロバクターの移動特性の評価と移動制御方法の開発
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